愛知県コロナ対策サイト(非公式)公開までの4日間
投稿日: 2020年07月24日 更新日: 2020年07月28日
はじめに
愛知県版の新型コロナ感染症対策サイト(非公式)の立ち上げから4ヶ月余りが過ぎました。 このプロジェクト立ち上げのきっかけなどを、発起人である私の目線から見た記録としてまとめておきたいと思います。
メンバーの多くが、このプロジェクトで初めて知り合い、そのメンバーで一つのサイトを公開するという怒涛の4日間を、私の記憶が薄れてしまう前に。
新型コロナ感染症対策サイトについて
本記事では、東京都が2020年3月3日に公開した「東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」及び、そのサイトから派生した各地域版のことを指します。
東京都のサイトはCode for Japanというシビックテック団体が、東京都から依頼を受けて構築され、そのソースコードは公開されていて誰でも派生版を作れるようになっています。
参考: コロナ対応で見えてきた「シビックテック」の未来 | 未来コトハジメ
本記事では、その東京都のサイトから派生した愛知県版 (https://stopcovid19.code4.nagoya/) のサイトおよびプロジェクトについて記載します。
私について
私(宮内 はじめ)は、Code for Nagoyaというシビックテック団体に所属しています。このサイトを立ち上げるきっかけもCode for Nagoyaの活動に参加していたことが大きく関係しています。
※シビックテックとは、シビック(市民)とテック(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、市民自身がテクノロジーを活用して、行政サービスや社会課題の解決を目指す取り組みです。
私にとって任意団体であるCode for Nagoyaはクラブ活動みたいなもので、普段は会社員として働いています。
シビックテック活動には様々な人が参加しています。Code for Nagoyaにも大学の先生や学生、行政職員の方や議員さん、私のような会社員やフリーランスの方など様々です。そういった様々な職種の、様々な考え方の方と交流できることは、私がシビックテック活動に参加する理由の一つです。Code for Nagoyaを通じて、東京都の対策サイトを立ち上げたCode for Japanの関さんや、その派生第一弾である北海道のサイトを立ち上げたメンバーとも交流があり、多くのことを学ばせて頂きました。
もう一つ、私は現在本職はエンジニアではありませんが、シビックテック活動にはエンジニアとして参加しています。Code for Nagoyaを始めとするシビックテックコミュニティではエンジニア向けの勉強会やイベントを数多く開催していて、また優秀なエンジニアが多く参加しています。 それは私のエンジニアとしての成長に大きく寄与しており、そのことも活動に参加する理由の一つです。
上記のように「シビックテック活動に参加していた」「エンジニアとしての下地があった」の2点が揃っていたことは大きな要因でした。
どちらかが欠けていたら、少なくとも私から「東京都のサイトを元に、愛知県版を作ろう!」とは発起することはなかったと思います。
立ち上げのきっかけ
東京都のサイトが公開された2020年3月3日の少し後、3月8日にCode for Nagoyaではオープンデータに関するイベントが開催されました。私もこのイベントに参加しています。
名古屋市オープンデータ ボーダレスラウンドテーブル キックオフ(第0回) https://www.facebook.com/events/2346062398826570/
そのイベントに参加された行政職員の方から、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトについても話題が出ました。
「東京都のサイトを元に愛知県版を作ることはできるものなんでしょうか?」という職員さんからの問いかけに、「(きっと)できます。やってみましょう。」と応じたのがきっかけです。
私がきっとできるだろうと思った理由はいくつかあります。
- 東京都のサイトを構築したのがCode for Japanであることを知っていた。読みやすく、再利用しやすいコードであろうと予想できた。
- 先達であるCode for Sapporoの存在。
- Code for Nagoyaを通じて愛知県には多くの優秀なエンジニアがいることを知っていたし、一緒にやってくれる人もきっと見つかるんじゃないかという想い。
結果として、上記はいずれも当たったと思います。ソースコードは再利用しやすいように考えられていて、北海道版のカスタマイズはとても参考になり、多くのエンジニアが愛知県版のサイトの構築に参加してくれました。
公開までの4日間
1日目(3/8)
3月8日のイベントが終わってその日の夜。私はまず、東京都のソースコードを派生させて動作させることを試みました。
具体的にはGitHubサイトからソースコードをForkし、サイトをホスティングするためのNetlifyとの連携設定を行いました。
東京都のメンバーが製作したそのソースコードは、爆速で公開されたにも関わらずドキュメントがしっかりしていて、派生も見据えて作られていたため、その作業はすぐに完了しました。
次に私はFacebookグループを作って一緒にサイト構築してくれる仲間を募りました。この時はCode for Nagoyaを始めとして、愛知県内のCode forや、私が所属しているFOSS4Gという位置情報エンジニアのコミュニティに声をかけています。
また、Code for JapanのSlackで東京都のサイトについて活発に議論されるチャンネルに参加し、愛知版を立ち上げる準備をしていることを投稿しました。このことが翌日以降、愛知県版の開発メンバーが増えるきっかけになったと思います。
更に開発スピードを加速するために、集まったメンバーでオンラインミーティングをしたほうが良いだろうということで、翌日、翌々日のオンラインミーティングを調整しました。
2日目(3/9)
2日目以降、私はミーティングを開催したり、プロジェクトの方向性を決めることに手一杯で、多くのコードは集まったメンバーが仕上げています。
この日の私のFacebookグループを読み返してみると、私がボトルネックにならないよう、メンバーに権限を委譲したりしてます。プルリクのマージ等の判断についてもそうですし、GitHubなどの権限も委譲していました。
私がこの日にやったエンジニアっぽいタスクは、「ドメインを設定する」ということくらいでしょうか。この時に「stopcovid19.code4.nagoya」というドメイン名が決まり、アクセスできるようになっています。(この時点ではまだ外部に公表はしていませんでしたが)
愛知県以外の状況としては、東京都のサイトの地域版としては初めての事例となった北海道のサイトがこの日にローンチされました。また、Code for JapanのSlackでも地域版の情報共有用のチャンネルが立ち上がりました。
この日、我々のプロジェクトでは初めてオンラインミーティングが開催されました。このミーティングには7名のメンバーでプロジェクトのタスクの洗い出しやアサインなどについて話し合われました。
そしてオンラインミーティングが終わり、各々作業に戻ったわけですが、翌日私は衝撃を受けることになります。
3日目(3/10)
朝起きたらサイトができてました。
いや、正確にはサイトのデザインが現在の愛知カラーになって、オリジナル感が出ていました。前日までは元となった東京都の緑を基調としたデザインのままでしたが、現在のえんじ色(愛知県旗のカラー)を基調としたデザインに変更が完了していたので、一瞬「サイトができてる」と勘違いするほどの衝撃を受けたことを覚えています。
サイトデザインについてはこの日ほぼ完成していたと言っても過言ではありません。この時、公開までの時間がそう長くは掛からないだろうと感じたのは私だけではないと思います。
この日も前日に続いてオンラインミーティングを開催しました。前日とは異なるメンバーで7名が参加し、タスクの共有や、GitHubの使い方についての共有が行われました。
https://qiita.com/FPC_COMMUNITY/items/b9cc072813dc2231b2b2
この時点でFacebookグループは30名を超えるメンバーが活発に議論していて、そろそろSlackに移行しようということになり、即日それは実行されました。
今振り返ってみると、Facebookグループを使って議論していたのは丸48時間くらいということになりますね。
また、この日に地域版としては2番目となる神奈川県版が立ち上がりました。
4日目(3/11)
4日目にして、すでにメンバーの大半はこのプロジェクトで初めてお会いする方のほうが多くなっていました。
そしてこの日、公開に向けての全タスクが完了し、翌日朝7時から告知を開始しようということになりました。
地域版としては3番目となる愛知県版はこうして産声を上げることができました。
それからの日々も多くのことがありましたが、本記事は一旦ここまでの記録とします。
最後に
結果として、私は発起人としてこのプロジェクトに関わりましたが、私が発起せずとも誰かが愛知県版を立ち上げていたでしょうし、実際に立ち上がってもいました。
現在は多くの人がこのプロジェクトに参加して、プロジェクトが運営されています。
いつか、このメンバーでリアルに会って語りあえる日を楽しみにしています。
名前:宮内 はじめ
Code for Nagoya名誉代表
E2D3名古屋支部長
プログラマーです。GISやデータビズが好きです。このサイトは宮内の個人的なメモです。